地球温暖化(気候変動)、パリ協定、SDGs、地域循環共生圏など環境・持続可能性からの要請と、分散型自然エネルギー(再生可能エネルギー)の急拡大、エネルギーのデジタル化技術の進展などが相まって、「エネルギー転換の現場」である自治体に期待される役割は高まっている。一方、足元では知見の不足や協働体制の不備、メガソーラーの地域トラブルなど課題も多い。

本連載では地域主導のエネルギー転換の潮流を描き、その中でも核となりうる自治体のエネルギー政策と役割を考えていく。

エネルギーの「新しい世界」

今、エネルギーの世界には大転換期が訪れている。自然エネルギー発電では、太陽光・風力がコスト低下により急拡大し、世界のエネルギー関連投資の半分以上が自然エネルギーに向けられている。世界再生可能エネルギー機関(IRENA)の報告書では、世界全体で自然エネルギーの価格は2020年までに化石燃料と同等か下回ると予測している。

さらに電力・熱・交通・建築のエネルギー面での統合が進んでいる。ゼロエネルギー住宅(ZEH)に設置した太陽光発電で余った電気を熱に変えたり、蓄電池や電気自動車に貯めたり、近隣と融通することも当たり前になる。加えてAIやブロックチェーンといったデジタル化の波がエネルギービジネスにも押し寄せ、小規模・地域分散・ネットワーク型への変化はさらに加速していく。

変化は日本でも

日本の電力に占める自然エネルギーは従来大規模水力が主体で10%ほどであったが、2012年の固定価格買取制度の導入以降太陽光が急増し、2018年度では太陽光が6.7%、自然エネルギー全体で17.5%となった。

1時間ごとの電力データからは、より大きな変化が見えてくる。例えば2018年5月20日(日)の10時から12時に四国では自然エネルギーだけで需要を賄えるほどになった(図)。同月には九州や北陸でも需要の90%を自然エネルギーで賄える時間帯があった。

図1. 四国エリア 2018年5月20日

出典:ISEP Energy Chart「発電量の推移」四国エリア 2018年5月20日データ.

長期的なエネルギー目標の設定、固定価格買取制度の大幅見直し、送電線の不足、電力市場の継続的改革、熱政策の不在など国が対処すべき課題はいまだ多い。しかし分散型エネルギーへの転換は日本でも起こりはじめているし、ビジネスも動き出している。

「苦悩する」実情と自治体への期待

こうした背景のもと、自治体は地域からのエネルギー転換の要としての期待と課題の両方を抱えている。自然エネルギーや省エネルギーに長年取り組み、まちづくりと統合して推進する自治体もあれば、大規模な太陽光発電開発に伴う地域トラブルに悩む自治体もある。エネルギーが地域の未来に大きな影響を持つからこそ、自治体エネルギー政策は必要となる。

2017年に一橋大学・環境エネルギー政策研究所などが行なった全国市区町村への自然エネルギーアンケート(1,741自治体に依頼、回収率は79.4%)からは、自治体の実情が見えてくる。自然エネルギーの利用を推進する理由についての回答は、上位が「温室効果ガスの排出削減」「エネルギーの地産地消」「地域の活性化」となっている。これらは極めて妥当に思える。しかし、「自然エネルギーがどのように地域の活性化につながるのか」という道筋を具体的に描いている自治体は稀ではないだろうか。

自然エネルギーの利用に関する課題を尋ねた項目では「必要となるノウハウや経験の不足」「事業の資金調達が難しい」「事業者と周辺住民住民とのトラブルが発生するおそれ」「地域の景観に悪影響を与えるおそれ」が20%を超えていて、自然エネルギーを適切に推進することの難しさが浮き彫りになっている。

自治体が実施している自然エネルギー関連政策への設問で30%以上が選択した回答は、自治体による「公共施設等の屋根等への太陽光パネルの設置」「自然エネルギー導入促進のための計画・要綱」民間向けの「自然エネルギー設備の設置補助・助成」であった。他方、「自然エネルギー導入促進のための条例制定」や「自然エネルギー割合を考慮して電力を調達」「自治体新電力の設立検討」など一歩進んだ取組を行う自治体は5%に満たなかった。

さらに自治体の担当職員と話すと「ビジョンや計画は作ったがコンサル任せで実はよくわからない」「他部署の協力が得られない」「地域で一緒に取り組むパートナーが見つからない」といった実務上の悩みも多い。

自治体エネルギー政策の可能性

これまで見てきたように課題は山積みだが、自治体のエネルギー政策と役割は今後さらに重要性を増していく。人口10万人の長野県飯田市では、地域エネルギー事業を持続可能な地域づくりと明確に結びつけ、支援をしている。長野県は「地域経済を筋肉質にしていく」という視点を持って省エネルギーや自然エネルギーの政策を打ち出している。

端的に言えば「地球温暖化のためだけに、限られた予算からの持ち出しで啓発や補助を行って、自然エネルギーを普及しよう」という時代はもう終わりつつある。これからは「エネルギーと地域課題を結びつけ、費用対効果を検討しながらエネルギー政策を策定し、自然エネルギーや省エネルギーをツールとして地域の未来像を変えていく」ことが求められている。そして地域の取り組みが動き出した時に、裏方として支えることも自治体の重要な役割となる。次回以降は事例を紹介しながら自治体のエネルギー政策と役割について具体的に検討していく。


テキスト:山下紀明(環境エネルギー政策研究所)
オリジナル掲載:『地球温暖化』「地域から始めるエネルギー転換 − 自治体の政策と役割」(2019年9月).