2021年7月16日、中国全国炭素排出量取引制度(ETS)の市場取引が正式にスタートした。

全国炭素排出量取引制度の開始

元々の予定では、電力、鉄鋼など8大業種を含む制度として2017年までに導入される計画であったが、実際は発電部門のみを対象とした制度として、しかも4年遅れてのスタートとなった。遅れた背景には、企業提出の排出量データの質に課題があったことや割当方法論の開発が遅れたこと等の原因が挙げられる。

全国ETSの初期の制度対象は、発電・熱供給事業者や自家発電設備を保有する他の業種の事業者(医薬、石油化学、金属製造、化学繊維、食品製造、製紙など)などの内、2013〜2019年の任意1年間の温室効果ガス(二酸化炭素)の排出量が26,000tCO2e以上の2,162事業者である。対象事業者らによる合計排出量は45億t前後であり、中国全体CO2排出量の約4割を占める。

取引状況

取引が開始した2021年7月16日から12月31日までの5ヶ月半の間、排出枠の全体取引量は1.78億t、総取引額は76.6億元(約1,226億円、月間平均223億円)に達した。取引量ベースで見た場合、排出枠の平均価格は43元/t(約690円/t)前後であり、EU-ETS価格(1万円/t前後)に比べると割安である。ただ、2015年1月1日から開始した韓国ETSの炭素価格が初年度の1,000円/t前後(年平均価格)から現在の3,500円/tまで、段階的に上昇したことを考慮すると、将来、中国ETSの炭素価格も上昇する可能性は十分ある。

取引方式は、大きく、一般協議取引(立会取引に相当)、大口協議取引に大別できる。一般協議取引とは、譲渡希望者、または、買取希望者が、取引システムを通じ、あらかじめ希望取引量・価格を提示し、システムが価格競争上位5位の範囲においてマッチングさせる方法であり、取引目的量が10万t- CO2e未満の場合が対象になる。一方、大口協議取引は、取引目的量が10万t- CO2e以上の場合が対象となり、譲渡希望者と買取希望者の一対一の価格協議を経て合意された金額で契約・取引を実施する方法であり、取引所が提供したオンラインシステムにおいてすべてのプロセスが完結できる。実際、全体取引量の8割以上を大口協議取引が占めている。

表. 中国ETS実施初年度の取引実績(2021年7月16日~2021年12月末)/出典:上海环境エネルギー取引所のデータに基づき、筆者作成(*単位の「元」は中国人民元を指す)

表. 中国ETS実施初年度の取引実績(2021年7月16日~2021年12月末)/出典:上海环境エネルギー取引所のデータに基づき、筆者作成
(*単位の「元」は中国人民元を指す)

最終成果

中国ETS制度において、対象事業者は、企業活動実績(発電量・熱生産量)相応の排出枠を翌年までに政府に提出する義務がある(排出枠清算義務)。ただ、ETS制度導入の初年度に限り、事業者は2019年と2020年の2年分の排出枠の清算が求められ、その最終期限が2021年の12月31日である。その最終期限まで99.5%の事業者が期限内での排出枠清算義務を果たした。

中国ETSの順調な滑り出しであるとも言える。

※ 本文中の内容の一部は筆者の雑誌シリーズ「激動中国:パリ協定後の気候変動政策」『地球温暖化』(2021年9月号、11月号、2022年1月号)から引用したものである。

Text: 金振(地球環境戦略研究機関)